私たちの健康的な食生活に欠かせない『油』。
調理の際に使う油や、加工食品に含まれる目に見えない油は、私たちの健康にどのような影響を
与えているのでしょうか?
実は、油には“良い油”と“避けたい油”が存在します。
オリーブオイルや魚に含まれる不飽和脂肪酸が体に良いと言われる一方で、揚げ物や加工食品に使われる
トランス脂肪酸や酸化した油は健康リスクを高める原因になることも…。
今回は、食べ物に含まれる油の種類や特徴、そしてどのように選び、活用すれば良いかについて詳しくご紹介します!
油の基本構造
食品に含まれる油(脂質)のほとんどは「トリグリセリド(中性脂肪)」と呼ばれる分子構造をしています。
● トリグリセリド(中性脂肪)の構造
トリグリセリドは『グリセロール』という骨格と、それにくっついている『脂肪酸』から成り立っています:
- グリセロール
→ 3つの炭素を持つ「骨格」となる部分。 - 脂肪酸
→ グリセロールに結合する「尾のような部分」。
通常3本の脂肪酸が結合しています。
トリグリセリドは、脂肪酸(飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸)の種類によって性質(体への影響や状態)が変わります。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸は、脂質(脂肪)の種類を示す用語であり、それぞれの化学構造の違いに
よって体への影響や役割が違います。
以下に、それぞれの特徴と代表的な食材を説明します。
1. 飽和脂肪酸
特徴:
- 飽和脂肪酸は、脂肪酸の炭素鎖に二重結合がなく、すべての炭素が水素で「飽和」されている構造を持ちます。
- 常温で固体であることが多いです。
- 過剰摂取すると、LDL(悪玉)コレステロール値を上昇させ、心疾患のリスクを高めるとされています。
具体的な食材:
- バター
- ラード(豚脂)
- 牛肉や豚肉の脂身
- パーム油
- ココナッツオイル
2. 不飽和脂肪酸
特徴:
- 不飽和脂肪酸は、炭素鎖に1つ以上の二重結合が含まれています。
- 一価不飽和脂肪酸(二重結合が1つ)
- 多価不飽和脂肪酸(二重結合が複数)
- 一価不飽和脂肪酸(二重結合が1つ)
- 常温で液体であることが多いです。
- 適量をとると血中コレステロールを下げ、心臓や血管の健康を保つ効果があるとされています。
具体的な食材:
- 一価不飽和脂肪酸を含む食品
- オリーブオイル
- アボカド
- アーモンドやカシューナッツ
- 多価不飽和脂肪酸を含む食品
- 青魚(サバ、イワシ、サンマなど)に含まれるオメガ3脂肪酸(DHA、EPA)
- 大豆油やコーン油
- クルミやチアシード
動物性脂肪に多い『飽和脂肪酸』の体への影響
動物性脂肪は、『血液をドロドロにする』と聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。
飽和脂肪酸を摂りすぎると、血液の「粘度」そのものが直接的にドロドロになるわけではありませんが、
血液中の脂質バランスに影響を与えることで、結果的に健康リスクを高める可能性があります。
以下にその理由を詳しく説明します。
1. 飽和脂肪酸の摂取が体に与える影響
飽和脂肪酸は、肉類の脂身やバター、ラード、ココナッツオイル、パーム油などに多く含まれる脂肪酸で、
適量であればエネルギー源や細胞膜の構成成分として体にとって重要です。
しかし、過剰に摂取すると以下のような影響が出ることがあります:
(1)LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の増加
- 飽和脂肪酸を多く摂ると、LDLコレステロールが増加する傾向があります。
- LDLコレステロールが高いと、動脈硬化の原因となり、血管内にプラーク
(脂肪の塊)が蓄積して血流を妨げる可能性があります。 - 血管が狭くなることで、血液の流れが悪くなり、「ドロドロ」とした状態に近いリスク
が高まることがあります。
(2)HDLコレステロール(善玉コレステロール)への影響
- 一部の研究では、飽和脂肪酸はHDLコレステロール(血管内の余分なコレステロールを回収
する働きをする善玉コレステロール)を増やす効果もあるとされていますが、その上昇幅は
LDLの増加に比べると小さいため、トータルの脂質バランスが悪化する可能性があります。
(3)中性脂肪の上昇
- 飽和脂肪酸を摂りすぎることで、血中の中性脂肪が上昇する場合があります。
- 中性脂肪が増えると血液が粘性を帯びやすくなり、血液循環が悪くなるリスクがあります。
2. 「血液ドロドロ」の実際
実際には、飽和脂肪酸が直接血液ドロドロにするわけではありませんが、飽和脂肪酸を摂りすぎると
以下のような健康リスクが報告されています。
- 血中のコレステロールや中性脂肪が多い状態になる
飽和脂肪酸の過剰摂取により、LDLコレステロールや中性脂肪が増えることで、血管内の血液の流れが悪化する可能性があります。 - 血小板の凝集が起こりやすい状態になる(血液が固まりやすい)
飽和脂肪酸が多い食事は、血小板の凝集を促進する可能性があるという研究もあります。これにより血液が粘り気を持ち、「ドロドロ」と感じるような状態になるリスクがあります。 - 動脈硬化を進行させる
飽和脂肪酸の摂りすぎによるLDLコレステロールの増加が原因で、動脈の壁にプラークが蓄積すると、血液がうまく流れなくなり、「ドロドロ」の原因になります。
不飽和脂肪酸は『酸化していないこと』が健康効果アップのポイント!
不飽和脂肪酸は酸化されやすい性質を持っています。
その理由は、炭素鎖に存在する二重結合にあります。
不飽和脂肪酸は、構造的にこの二重結合の部分が化学的に不安定であり、酸素や熱、光、金属イオンなど
にさらされると酸化しやすくなります。
この酸化によって、脂質が劣化し、健康に悪影響を及ぼす可能性がある「過酸化脂質」などの
有害物質が作られることがあります。
酸化のしやすさのポイント
- 二重結合の数が多いほど酸化しやすい
- 一価不飽和脂肪酸(例:オリーブオイルに多いオレイン酸)
比較的安定しており、酸化しにくい。 - 多価不飽和脂肪酸(例:青魚に多いDHA・EPAや植物油のリノール酸)
二重結合が複数あるため、非常に酸化しやすい。
- 一価不飽和脂肪酸(例:オリーブオイルに多いオレイン酸)
- 熱や光に弱い
- 高温での調理(揚げ物や炒め物など)や直射日光に当たると酸化が進みます。
- 酸化を防ぐために、不飽和脂肪酸を含むオイルや食品は冷暗所で保存することが重要です。
- 高温での調理(揚げ物や炒め物など)や直射日光に当たると酸化が進みます。
- 保存期間が長いと劣化しやすい
- 開封後の油やナッツ類などは、時間の経過とともに酸化が進むため、なるべく早めに食べ切りましょう。
酸化を防ぐポイント
- 抗酸化作用のある成分を活用
- ビタミンEやポリフェノールが多く含まれる食品(例:ナッツやオリーブオイル)は、酸化を防ぐ効果があります。
- 市販の油にはビタミンEが添加されていることもあります。
- ビタミンEやポリフェノールが多く含まれる食品(例:ナッツやオリーブオイル)は、酸化を防ぐ効果があります。
- 保存方法に気をつける
- 開封後は、オイルを遮光性の高い瓶や密閉容器に入れ、冷暗所や冷蔵庫で保存します。
- 魚やナッツ類も冷蔵または冷凍保存するのが望ましいです。
- 開封後は、オイルを遮光性の高い瓶や密閉容器に入れ、冷暗所や冷蔵庫で保存します。
- 調理法に注意する
- 高温調理を避ける:多価不飽和脂肪酸を多く含むオイル(例:亜麻仁油、えごま油など)は、加熱せずそのままサラダや和え物などに使いましょう。
- オリーブオイルのような一価不飽和脂肪酸が多いオイルは、加熱にある程度耐えられるため、調理に適しています。
- 高温調理を避ける:多価不飽和脂肪酸を多く含むオイル(例:亜麻仁油、えごま油など)は、加熱せずそのままサラダや和え物などに使いましょう。
まとめ
不飽和脂肪酸は健康に良い効果が多く、特に心血管疾患や脳の健康に役立つとされていますが、
酸化しやすい性質を持っています。
適切な保存・調理方法を心がけることで、健康的な摂取を続けることができます。
容量の大きなものの方がお得ですが、油は、
●2〜3週間程度で使える量をこまめに買い替える
●必要に応じて冷蔵庫で保管する
●ナッツ類も大袋ではなく、食べきりサイズを選ぶ
●高温での加熱調理を避ける
●油の使い回しはしない
ことが、大切です。