活性酸素がもたらす『がん化』のメカニズム


活性酸素とがんの関係

私たちの体は、呼吸によって酸素を取り込み、エネルギーを作り出しています。

しかし、この過程で「活性酸素」と呼ばれる不安定な分子が発生します。

活性酸素は強い酸化力を持ち、細胞を傷つけることが知られています。

通常、体には活性酸素を除去する仕組みが備わっていますが、過剰に発生すると健康に悪影響を
もたらし、がんの発生にも深い関係があるとされています。

今回のコラムでは、活性酸素が細胞のがん化を引き起こすメカニズムと
細胞のがん化を防ぐために日常生活でできることを取り上げます。


活性酸素が体内でできる仕組み

私たちの体は、生きるために「酸素」を使ってエネルギーを作っています。

このエネルギーがないと、心臓も動かないし、脳も働きません。

でも、酸素を使うときに「副産物(おまけ)」として活性酸素が生まれます。

どこで活性酸素ができるの?

活性酸素は、主に「細胞の発電所」と呼ばれるミトコンドリアで作られます。

私たちは食べ物+酸素を使ってエネルギーを作ります。

このとき、ミトコンドリアの中では酸素を電子とくっつける作業が行われます。

でも、この作業が100%完璧ではないため、一部の酸素が「不完全な形」で変化し、活性酸素になってしまうのです。

活性酸素が生まれる主な場面

活性酸素は、エネルギーを作るときだけでなく、いろいろな場面で生まれます。

① 呼吸するとき

  • 酸素を吸うと、その一部が活性酸素に変わる。

② 激しい運動をしたとき

  • 激しい運動をして体がたくさん酸素を使うと、ミトコンドリアがフル稼働
    その結果、活性酸素も増えてしまう。


③ 紫外線を浴びたとき

  • 太陽の紫外線が皮膚の細胞に当たると、活性酸素が発生
    (これが細胞を傷づけシミやシワの原因になることも)


④ ストレスを感じたとき

  • 強いストレスを感じると、体は「戦う準備」をするためにいろいろな物質
    出すが、その過程で活性酸素も増えてしまう。

⑤ タバコやお酒をとったとき

  • タバコの煙やアルコールが分解されるときに、活性酸素が発生

⑥ 体に炎症が起こったとき

  • 風邪をひいたり、ケガをしたりすると、免疫細胞が細菌やウイルスを攻撃します。
    そのときに「戦う武器」として活性酸素が使われることも。



活性酸素は悪者なの?

活性酸素は「体を傷つける」とよく言われますが、実は悪いことばかりではありません。

🔵 良い働き

  • 細菌やウイルスをやっつける。
  • 体を守るためのサインを出す。

🔴 悪い働き

  • 必要以上に増えると、細胞を傷つけて老化や病気(がん、動脈硬化など)の原因になる。

つまり、「活性酸素が増えすぎること」が問題なのです。


まとめ

✅ 活性酸素は、酸素を使うときに自然にできるもの。
✅ 呼吸、運動、紫外線、ストレス、タバコ、お酒、炎症などで増えやすい。
✅ 適量なら体を守るが、増えすぎると細胞を傷つける。



活性酸素が細胞の設計図であるDNAを傷つける

活性酸素が増えすぎると、体の細胞にダメージを与えます。
特に大事なのは「DNA」という遺伝情報を持つ部分です。

😊 健康なとき

  • 細胞はDNAの設計図に従って、正しく働いている。

😷 活性酸素が増えたとき

  • 活性酸素がDNAを傷つける。
  • すると、細胞の動きがおかしくなる。
  • 修復できる場合もあるが、傷が残ると「がん化」することがある。




〜さらに詳しく〜活性酸素の細胞へのダメージ

活性酸素が増えすぎると、以下のような影響が起こります。


  1. DNAの損傷
     

    活性酸素はDNAの塩基(特にグアニン)を酸化し、突然変異を引き起こします。

    👉 8-オキソグアニン(8-oxoG)生成(グアニンはDNAを構成する塩基の中で最も活性酸素によって酸化されやすい)

  2. タンパク質の変性


    酵素や細胞膜の構成タンパク質が酸化され、正常な機能を失い、細胞の修復機能や免疫機能が低下し
    ます。
    傷ついた細胞が修復されず、がん化した細胞を排除する免疫機能が落ちてしまうことで
    がん化が進んでしまいます。

  3. 脂質過酸化

    細胞膜の脂質(リン脂質)が酸化され、細胞膜が壊れやすくなり
    細胞の恒常性が崩れ、がん化しやすくなります。(ダメージを受けやすくなる)


3. どうやってがんができるの?

活性酸素がDNAを傷つけると、細胞のルールが乱れてしまいます。

その結果、次のような変化が起こります。

① 異常な細胞が生まれる

  • 本来は規則正しく分裂する細胞が、間違った指令を受ける。
  • その結果、異常な細胞ができてしまう。

② 免疫の力が弱いと、異常な細胞が増える

  • ふつう、体には「異常な細胞を見つけて消す仕組み」がある。
  • でも、免疫の力が弱いと、その異常な細胞が残ってしまう。

③ 異常な細胞がどんどん増える

  • ルールを守らず、勝手に増えていく細胞が増える。
  • これが「がん細胞」となる。


さらに詳しく〜がん化のメカニズム

活性酸素による細胞のダメージが蓄積すると、次のようなプロセスでがん化が進みます。

  1. 発がんイニシエーション(Initiation)

    • 活性酸素がDNAを損傷し、突然変異を引き起こす。
    • p53(腫瘍抑制遺伝子)などの変異が蓄積し、細胞のがん化を抑制できなくなる

  2. 発がんプロモーション(Promotion)

    • 変異を持った細胞が増殖しやすくなる。
    • 慢性炎症やホルモンの影響で、異常細胞の成長が促進。


  3. がん進行(Progression)

    • さらに突然変異が蓄積し、がん細胞が増殖・転移する能力を獲得。
    • 免疫監視機構を回避し、悪性化が進む。


活性酸素を増やさないために

活性酸素は、私たちの細胞が生命活動を完全にゼロにすることはできませんが、増えすぎないようにすることはできます。

🍊 抗酸化作用のある食べ物をとる

  • ビタミンC(みかん、レモン、パプリカ)
  • ビタミンE(ナッツ、アボカド、かぼちゃ)
  • ポリフェノール(緑茶、赤ワイン、チョコレート)

🧘‍♀️ ストレスを減らす

  • ゆっくりお風呂に入る。
  • 好きなことをしてリラックスする。

👟  適度な運動をする

  • ウォーキングやヨガなど軽い運動をする。
  • 激しい運動は活性酸素を増やすので注意。

🚬 🍷  タバコ・お酒を控える

  • タバコは活性酸素を増やすので、やめるのがベスト。
  • お酒も飲みすぎないようにする。


まとめ

  • 活性酸素は、酸素を使うときに自然にできるもの。
  • 増えすぎると、DNAを傷つけて「がん」につながることがある。
  • ストレス、紫外線、タバコ、お酒、炎症などで増えやすい。
  • 抗酸化作用のある食べ物や、適度な運動でコントロールできる。

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