「事実」と「感情」がセットで記憶されるのはなぜ?——脳の仕組みをやさしく解説
脳には、起こった事がらにすぐに反応する部位とそれを分析して冷静に考える部位があります
何か出来事が起きたとき、脳の中では2つの係が同時に働いています。
- 速い係(扁桃体):
そくざに「危険か、安全か」だけを判断する警備員。
細かい事情はおかまいなし、とにかく反応が早い。 - 遅い係(前頭前皮質・海馬):
状況をじっくり分析する調査官。
「なぜそうなったのか?」「本当に危険なのか?」を筋道立てて考える。
脳が健康な状態なら、調査官が警備員に「大丈夫、落ち着いて」とブレーキをかけてくれます。
ストレスがかかると、警備員が暴走しやすくなる
ところが、ストレスホルモンが出ている状態(イライラ、不安、緊張しているとき)では、
- 警備員(扁桃体)の声が大きくなり
- 調査官(前頭前皮質・海馬)の声がかき消される
という逆転現象が起きます。
この状態で記憶されると、出来事(事実)に、そのときの不快な感情がべったり貼りついたまま保存されてしまうのです。
まるで、写真に強い匂いのシールを貼ってしまうようなもの。
後でその写真(記憶)を見るたびに、匂い(不安・不快感)まで一緒によみがえってしまいます。
これが「思い出すたびに、また嫌な気持ちになる」正体で、
同じようなことが起こった場合に、以前の嫌な記憶が即座に思い出されて体が反応してしまったり、
「同じことが起こるかも」と想像しただけで、体がその時の記憶を呼び覚まし体が反応してしまう
ということになるのです。
放っておくと、ループにハマりやすい
- 警備員(扁桃体)が過敏になりすぎる
- 同じことをぐるぐる考え続ける「反芻思考(はんすうしこう)」が起きやすくなる
- ストレス状態が長引くと、じっくり考えるの働きそのものが弱ってしまい、そくざに反応して
しまい、ささいなことでイライラしたり、落ち込んだり、緊張状態が続いてしまうのです。
つまり、「考えすぎて余計につらくなる」のは、性格の問題ではなく、脳の反応として起こりうることなんです。
では、どうすればいいの?
ここで役立つのが、「事実」と「感情」をいったん分けて眺めてみるという習慣です。
例えば、
- 「上司に強く言われた」→ これは事実
- 「自分はダメな人間だと言われた気がした」→ これは感情・解釈
この2つを混ぜずに、
「事実はこう。それに対して私はこう感じた」
と、少し距離を置いて言葉にしてみる。これだけで、調査官(前頭前皮質)が働き出し、警備員(扁桃体)の暴走にブレーキがかかりやすくなります。
まとめ
不安や落ち込みが続くのは、「気の持ちよう」ではなく、脳の仕組みとして起こりうる自然な反応です。
ただし、つらさが続く場合は、一人で抱え込まず、専門家(精神科・心療内科・臨床心理士など)に相談することもぜひ選択肢に入れてくださいね。
