
風邪やインフルエンザ、新型コロナ・・症状は落ち着いたのに、咳だけが何週間も続いてしまう…。
そんな方が増えています。
特に40代・50代の女性だけではなく、20代、30代の若い女性でも「もう治ったはずなのに咳が止まらない」「夜中に咳が出て眠れない」といったお悩みをよく伺います。
このような状態は、医学的には 「感染後遷延性気管支炎(感染後咳嗽)」 と呼ばれています。
感染後咳嗽は女性や中高年に多く見られる症状なのです。
目次
感染後咳嗽とは?
ウイルスの感染によって傷ついた気管支の粘膜は、とても敏感な状態になります。
そのため、冷たい空気や会話、運動などの少しの刺激でも咳反射が起こりやすくなります。
この「過敏な気管支の状態」が残ることで、感染症そのものは治っているのに咳だけが長引いてしまうのです。
なぜ女性に多いの?
40代・50代の女性では、次のような要因が重なりやすくなります。
🟨 ホルモンバランスの変化で粘膜が乾燥しやすい
🟨 免疫力や回復力が20〜30代に比べて少しずつ低下している
🟨 家庭や仕事でのストレスにより休養が不足しがち
こうした背景が、咳を長引かせる原因となります。
また、20〜30代の若い女性でも、仕事や育児の忙しさで十分に休めないと、同じように咳が長引くことがあります。
セルフケアの工夫
感染後咳嗽は多くの場合、時間とともに回復します。
ただし、生活の質を大きく下げるため、次のようなセルフケアを意識しましょう。
- 🌿 加湿:加湿器や濡れタオルで空気を潤し、気管支を保護
- 🌿 保温:冷たい空気で咳が出やすいため、マスクやマフラーで喉を温める
- 🌿 食生活:辛いものや冷たい飲み物、アルコールは咳を悪化させることもあるので控えめに
- 🌿 休養と睡眠:体力を回復させることで自然に咳も落ち着いていく
医療機関を受診すべきサイン
次のような場合は、自己判断せず呼吸器内科などの受診をおすすめします。
- ✅ 咳が 1ヶ月以上 続いている
- ✅ 夜も眠れないほど咳が強い
- ✅ 血が混じった痰が出る
- ✅ 息苦しさや胸の痛みを伴う
1か月(4週間)以上咳が続く場合は、一度医療機関を受診しましょう!
📌 理由
一般的な「感染後咳嗽」は、数週間〜2か月程度で自然に治まることが多いですが、他の病気と区別が必要な場合があります。
咳が長引く原因として、咳喘息・副鼻腔炎(後鼻漏)・胃食道逆流症・慢性気管支炎 などが隠れていることもあります。
また、まれですが、肺炎・結核・非結核性抗酸菌症・腫瘍 などの病気が咳の原因になっている場合
もあるため、安心のためにも受診が望ましいでしょう。
*非結核性抗酸菌症も近年増加傾向にある感染症で、詳細は後述しています
漢方でのアプローチ
西洋医学では咳止めや吸入薬が中心ですが、漢方は「咳を抑える」と「体を立て直す」の両方からサポートできます。
感染後に咳が長引くときによく使われる漢方薬
感染後咳嗽の咳は、夜眠れなかったり、人前で咳き込みやすくなったりと、生活に大きな影響を与えることがあります。
西洋医学では咳止めや吸入薬が中心となりますが、東洋医学では症状の特徴や体質に合わせて漢方薬を選び、咳症状を抑えながらも体力も回復させる方法をご提案いたします。
今回は、感染後に長引く咳に用いられる代表的な漢方薬について、それぞれの特徴をわかりやすくご紹介していきます。
🌿 咳をとめるタイプ(対症療法)
- 麦門冬湯(ばくもんどうとう)
・痰が少なく、乾いたような咳が続くタイプ。
・喉や気管支の乾燥感、夜間に咳き込んで眠れないときに適する。 - 滋陰降火湯(じいんこうかとう)
・咽の乾きが強く、空咳が長引くタイプ。
・体力が中等度〜やや低下した人に。 - 清肺湯(せいはいとう)
・黄色っぽい痰、咽の熱感を伴う咳に。
・感染後も炎症が残っている感じの時に。 - 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
・透明でサラサラした痰が多い、鼻水も多いとき。
・気管支が敏感で冷たい空気で咳が出やすい人に。 - 神秘湯(しんぴとう)
・痰が多く、咳き込むとゼーゼーしやすい場合。
・咳喘息との境目のような症状に使われることもある。
🌿 体力回復タイプ(補剤)
- 小柴胡湯(しょうさいことう)
微熱や胸脇部の重苦しさが残り、回復が遅いときに。 - 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
疲労が強く、食欲不振や気力低下があるとき。痩せ型・虚弱体質にも。 - 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
体力低下が著しく、冷えや貧血傾向を伴うときに。感染後の体力回復に幅広く用いられる。 - 人参養栄湯(にんじんようえいとう)
虚弱で、冷え・息切れ・動悸・食欲不振を伴うとき。高齢者や慢性疾患の回復期にも適する。 - 瓊玉膏(けいぎょくこう)
食欲不振や慢性疲労にも使いやすい方剤で体力低下・虚弱体質・疲労が蓄積している場合
に適している
特に40代以降の「気血陰」を補い、免疫力を高めたい人に向く
*漢方薬は医薬品です。漢方薬を選ぶ場合には、自己判断せず専門家に相談して選びましょう。
まとめ
感染後咳嗽は、命に関わる病気ではないことが多いものの、生活を不快にし、体力を消耗させます。
咳を抑えるケアと、体を立て直すケアを両立することが、回復への近道です。
セルフケアや漢方をうまく取り入れながら、必要なときは病院を受診しましょう。
*非結核性抗酸菌症(ひけっかくせいこうさんきんしょう)とは?
非結核性抗酸菌症(NTM症)は、結核とは違う種類の細菌(抗酸菌)によって引き起こされる肺の感染症です。
最近、特に日本で増えている病気で、50歳以上の女性や、もともと肺が弱い人
(ぜんそく・COPD・気管支拡張症がある人)に多いとされています。
🦠どんな細菌が原因?
「抗酸菌(こうさんきん)」という細菌が原因です。
この菌は水や土の中に普通にいるので、私たちは日常的に吸い込んでいます。
でも、免疫力が低下していたり、肺が弱かったりすると、菌が肺の中で増えてしまい、病気になってしまうのです。
代表的な菌の種類:
✅ マック菌(M. avium complex / MAC菌) → 日本で最も多い
✅ カンサシ菌(M. kansasii) → 結核に似た症状を起こすことがある
🤧どんな症状が出るの?
非結核性抗酸菌症の症状は、最初は軽いことが多く、「ただの風邪かな?」と思う人もいます。
でも、次第に長引く咳やだるさが続き、進行すると肺のダメージが大きくなります。
主な症状
☑ 長引く咳(1か月以上続く)
☑ 痰が出る(黄色や緑の痰)
☑ 体がだるい、疲れやすい
☑ 食欲がなくなる、体重が減る
☑ 微熱が続く
進行すると、肺が壊れてしまい、「気管支拡張症」や「空洞病変(肺に穴があく)」が起こることがあります。
🏥どうやって診断するの?
病院では、次のような検査をします。
✅ 胸部X線・CT検査 → 肺に異常(影や空洞)がないかチェック
✅ 痰の検査 → 痰に菌がいるか確認(3回以上の検査が必要)
💊どうやって治療するの?
治療が必要かどうかは、症状の進行具合によります。
🔵 軽症の人→経過観察
・症状が軽く、病気の進行がゆっくりなら「定期検査のみ」で様子を見ることもあります。
・適度な運動や、痰を出しやすくする習慣が大事。
🔴 症状が進行している人→長期間の薬の治療
・抗菌薬(クラリスロマイシン+リファンピシン+エタンブトール)を1年半~2年飲み続ける必要あり。
・薬の副作用(視力低下・肝機能障害)に注意しながら治療を進める。
🛡予防するには?
非結核性抗酸菌は、私たちの身の回りに普通にいる菌なので「完全に防ぐ」のは難しいですが、次のポイントを意識しましょう。
✔ 水回りの清掃をこまめにする(シャワーヘッド・加湿器など)
✔ 痰をしっかり出す習慣をつける(水分をしっかり摂る・軽い運動をする)
✔ 免疫力を高める生活を心がける(バランスの良い食事・適度な運動・ストレス管理)
📝まとめ
🔹 非結核性抗酸菌症は、結核とは違う細菌が肺に感染して起こる病気
🔹 長引く咳・痰・体重減少・微熱が続く場合は要注意!
🔹 治療は「経過観察」または「1年半以上の薬の服用」
🔹 普段から肺を守る生活を意識しよう!