夕方になるとぐったり…50代の疲れやすさ、なぜ?
胃腸と「気」から考える「3時のおにぎり」
「夕食の買い物はしたけれど、作る前にもうぐったり」
「カラダが重だるくて、お皿を洗うのもおっくう」
そんなお声を、よくいただきます。朝や昼はなんとか動けるのに、夕方になると急に電池が切れたようになる。家族のごはんを作らなければいけない時間なのに、体が言うことを聞かない。
実は私も、40代になってから、帰宅したらまずは横にならないと動けない日が続いていました。
「年齢のせいかな」「気合いが足りないのかな」と、自分を責めてしまう方も多いのですが、それは気持ちの問題ではありません。体の中では、ちゃんと理由があって起きていることなのです。
- 夕方のぐったりは、昼食が少なめで夕方までエネルギーが足りないことが一因になっていることがあります。
- 東洋医学では、胃腸は体を動かすエネルギー「気」をつくるもと。胃が弱い方ほど、気が不足しやすいと考えます。
- 一度にたくさん食べられないなら、3時のおやつにおにぎりをひとつ。回数を分けて少しずつ補いましょう。
なぜ、「夕方」になるとぐったりするの?
夕方に疲れが出やすい理由は一つではありませんが、まず見直したいのが食事の量と間隔です。
昼食を12時に軽く済ませると、夕食までは6〜7時間ほど空きます。その間も、仕事や家事、買い物で体は動き続けています。お昼の量が少ない方ほど、夕方にはエネルギーの「貯金」が心細くなりやすいと考えられます。
さらに40代は、体が変わりはじめる時期でもあります。
- 筋肉量が少しずつ減りはじめる:筋肉量は年齢とともに減り、特に脚の筋肉で目立つことが日本人を対象にした調査で報告されています。同じ家事でも、以前より疲れを感じやすくなります。
- 女性ホルモンがゆらぎはじめる:閉経をはさんだ前後約10年間を「更年期」と呼び、日本人の閉経の平均は50歳前後です。40代後半からは、疲れやすさを感じる方が増える時期です。
- 貧血が隠れていることも:20〜40代の女性では、およそ4人に1人が貧血の状態にあるという報告もあります。
「がんばりが足りない」のではなく、エネルギーの入り方と使い方のバランスが、少しずつ変わってきているのです。
東洋医学の視点:胃腸は「気」をつくるもと
東洋医学では、体を動かし、温め、守るエネルギーを「気(き)」と呼びます。気は、呼吸から取り入れるものと、毎日の食べものから胃腸(脾胃・ひい)でつくられるものがあり、食べものからつくられる気は「後天の気」と呼ばれます。
つまり、胃腸は気をつくる工場のようなもの。胃が弱く、一度にたくさん食べられない方は、工場の生産量がもともと少なめです。その状態で一日動き続けると、夕方には気が足りなくなりやすいと考えます。
そして気には、血(けつ)や水分を全身にめぐらせる働きもあります。気が足りないと、めぐらせる力も弱まり、重だるさや「動けない」感じにつながります。これが、夕方のぐったりの「根っこ」の一つです。
こんなサインはありませんか?「気」が足りないときのチェック
- 体がだるく、疲れやすい
- なんとなく気力がわかない
- 食後や日中に眠くなりやすい
- 食欲がない、量を食べられない
- 声に力がないと言われる
- かぜをひきやすい
- おなかをこわしやすい
東洋医学で「気虚(ききょ)」と呼ばれる状態に多いサインです(寺澤捷年氏の気虚スコアの項目を参考に、わかりやすく言いかえています)。あてはまる数が多いほど、気が不足ぎみかもしれません。診断のためのものではありません。
エネルギーが足りなくなるのは、どのタイミング?
昼食が少なめの日は、午後の早い時間からエネルギーが下がりはじめ、夕方に「ガス欠」を感じやすくなります。そこで、夕方の手前、3時ごろに一度補給することで、下がりきる前に支えることができます。
今日から試してほしいのは「3時のおにぎり」
3時のおやつに、お菓子ではなく、おにぎりをひとつ。これが今日からできる、いちばん簡単な一歩です。
なぜ、お菓子ではなくおにぎりなの?
甘いお菓子は、元気が出るようで続きにくい:31の研究をまとめた解析では、糖質をとったあと1時間以内は、とらなかった場合と比べて、むしろ疲労感が強く、注意力が下がる傾向がみられ、気分を上げる効果は確認されませんでした。「甘いもので元気が出る」は、思ったほどあてにならないようです。
脂っこいお菓子は、胃に負担をかけやすい:脂肪は胃にとどまる時間を長くします。胃もたれしやすい方(機能性ディスペプシア)では、脂肪の多い食事で吐き気や腹痛が出やすいことも報告されています。クッキーやスナック菓子、菓子パンは、思った以上に脂質が多いものです。
おにぎりは、体と胃腸にやさしい:ごはんは脂質が少なく、体を動かすエネルギーになりやすい主食です。東洋医学でも、お米は胃腸をいたわり気を補う食べものと考えられてきました。小さめのおにぎりなら、胃の弱い方でも食べやすい量です。
あなたの好きなおにぎりは?
①梅 ②鮭 ③昆布
どれも、3時のおにぎりにぴったりです。
| 具 | うれしいところ | 気をつけたいところ |
|---|---|---|
| ①梅 | さっぱりした酸味で、食欲がないときにも食べやすい | 塩分は多め。血圧が気になる方は、ほかの食事で塩分を控えめに |
| ②鮭 | たんぱく質がとれる。焼き鮭は具の量でも数gのたんぱく質に | 塩鮭は塩分も含むので、甘塩を選ぶのも一つ |
| ③昆布 | ミネラルや食物繊維がとれ、甘辛味で食べやすい | 佃煮は塩分と糖分を含みます |
| +ゆで卵 | 1個(約50g)でたんぱく質約6g。むいてあるものは手軽 | 胃が弱い方は、固ゆでより半熟や温泉卵が食べやすいといわれます |
数値は「日本食品標準成分表(八訂)」をもとにした目安です(鶏卵・全卵 可食部100gあたり たんぱく質12.2g)。ごはん自体にも、100gあたり2.5gほどのたんぱく質が含まれます。
タンパク質も意識するなら、②の鮭がおすすめ。ゆで卵をひとつ添えるのもいいですね。
もし、これをやっていたら今すぐやめて!
- 夕方まで何も食べずに、空腹をがまんするエネルギーが下がりきってから食べても、立て直すのに時間がかかります。
- 疲れたら、甘いお菓子や甘い飲み物で一時しのぎ元気になったように感じても、続きにくいことがわかっています。
- おなかが空きすぎて、夕食をドカ食い胃が弱い方は、もたれて余計に動けなくなります。
- 冷たい飲み物で空腹をごまかす東洋医学では、冷えは胃腸の働きを弱める原因と考えます。
かわりに、これを始めましょう
- 3時ごろに、小さめのおにぎりをひとつ
- 一度にたくさん食べられないなら、回数を分けて少しずつお昼が少なめの日ほど、間食で補う意識を。
- よく噛んで、ゆっくり食べる胃腸の負担を減らし、少ない量でも満足しやすくなります。
- 温かいお茶や汁物を一緒に
- 余裕があれば、ゆで卵をひとつ添えてたんぱく質も
特に、こんな方に試してほしい
- 胃が弱くて、一度にたくさん食べられない方
気をつくる胃腸に負担をかけずに補えるのが、少量ずつの補給です。 - 1人前を食べると胃がもたれて、お昼はいつも少なめの方
昼食で足りない分を3時に補うと、夕方まで持ちこたえやすくなります。 - 帰宅後、横にならないと動けない方
夕方のエネルギー切れが、ぐったりの一因になっているかもしれません。
こんなときは、まず医療機関へ
- だるさが2週間以上続く、日に日に強くなる
- 動悸・息切れ、顔色が悪いと言われる(貧血の可能性)
- むくみ、寒がり、体重の増加がある(甲状腺の病気の可能性)
- のどの渇き、尿の回数が多い、体重が減る(糖尿病の可能性)
- 気分の落ち込みや、眠れない日が続く
- 胃の痛みや胃もたれが続く、体重が減る
疲れの陰に、ほかの病気が隠れていることもあります。食事の工夫と並行して、気になる症状は医師にご相談ください。
漢方の視点:整えるのは、ご自身の力
夕方のぐったりは、木でいえば葉がしおれているサインです。葉だけに水をかけても、根っこが弱っていれば、また同じことがくり返されます。食事の工夫は、根っこに栄養を届ける毎日の手入れです。
そして、体を整えていくのは、もともと備わっているご自身の力です。漢方薬は、その力をグッと引き上げてくれる後押し役です。
同じ「疲れやすい」でも、胃腸が弱い方、冷えやすい方、眠りが浅い方など、根っこは一人ひとり違います。漢方薬も医薬品ですので、治療中の病気がある方や、お薬を飲んでいる方は、必ず事前にご相談ください。
よくある質問
- ダイエット中でも、3時におにぎりを食べていいですか?
1日の食事の量の中で調整すれば、問題ありません。小さめのおにぎり1個(ごはん約100g)は約160kcalです。
夕方に空腹をがまんして夕食で食べすぎるより、間食で少し補ったほうが、夕食の量を落ち着かせやすくなります。
- コンビニのおにぎりでもいいですか?
はい、かまいません。手軽に続けられることがいちばんです。ツナマヨなどマヨネーズ系は脂質が多めなので、胃もたれしやすい方は、梅・鮭・昆布などシンプルな具を選ぶとよいでしょう。
- おにぎりが食べられない日は、何がいいですか?
小さなおもち、カステラ、バナナ、ゆで卵など、脂質が少なく胃にやさしいものがおすすめです。温かいおかゆやスープも、胃腸をいたわりながら補えます。
- 卵は1日何個まで食べてもいいですか?
健康な方では、卵の個数に決まった上限はありません。ただし、脂質異常症で医師からコレステロールを控えるよう言われている方は、1日の摂取量を200mg未満にすることが望ましいとされています(日本人の食事摂取基準 2025年版)。卵1個には約190mgのコレステロールが含まれるので、主治医の指示に従ってください。
- 間食すると、夕食が食べられなくなりませんか?
3時ごろに小さめのおにぎり1個なら、夕食の時間には落ち着いていることが多い量です。夕食が入らないと感じる方は、半分の大きさから試してみてください。
最後に、相談という手があります。
まずは今日の3時、おにぎりをひとつ試してみてください。あなたはどのおにぎりを選びますか?
それでも夕方のぐったりが続くときは、胃腸の強さや冷え、眠りの状態など、体質から根っこを一緒に見ていくことができます。漢方に詳しい薬剤師や医師に相談すると、ご自身に合った整え方を一緒に考えてもらえます。
参考にした文献・資料(タップで開く)
- Mantantzis K, Schlaghecken F, Sünram-Lea SI, Maylor EA. Sugar rush or sugar crash? A meta-analysis of carbohydrate effects on mood. Neurosci Biobehav Rev. 2019;101:45-67.
- 日本消化器病学会 編「機能性消化管疾患診療ガイドライン2021—機能性ディスペプシア(FD)(改訂第2版)」南江堂
- 二神生爾, 阿川周平, 植木信江「機能性dyspepsia診療における内視鏡の役割」日本消化器内視鏡学会雑誌 2023;65(4):325-334.
- 文部科学省 科学技術・学術審議会 資源調査分科会「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2010年版)」策定検討会資料(鉄)
- 谷本芳美ほか「日本人筋肉量の加齢による特徴」日本老年医学会雑誌 2010;47(1):52-57.
- 日本産科婦人科学会「更年期障害」(一般の皆様へ)
- 寺澤捷年『症例から学ぶ和漢診療学』医学書院(気虚スコア)
- 日本東洋医学会 編『専門医のための漢方医学テキスト』南江堂
