秋になるとさみしい…さみしさの味わい方・手放し方

はんなり堂薬局薬剤師コラム|秋の気分の落ち込み・さみしさ

秋になると、さみしい…はなぜ?
日照と体内時計、東洋医学の「肺」から考える、さみしさの味わい方・手放し方

「夏にはあまり感じなかったのに、なんだかさみしい」

「特別何かがあったわけでもないのに、ふと涙が出そうになる」

「夕暮れどき、急に心細くなる」

夏にはあまり感じなかった、「さみしい」という気持ち。心が弱くなった? 性格のせい?
どちらも違います!
それは、季節の変化の中で、ごくごく当たり前のことなんです。

悲しい、さみしいと感じる心が前に出てくる時期、それが「秋」なのです。その理由を現代医学と東洋医学からひもとき、さみしさを「味わって、手放す」方法をお伝えします。

この記事のポイント
  • 日が短くなると、体内時計や気分にかかわるセロトニンに影響が出るといわれています。50代はホルモンのゆらぎも重なります。
  • 東洋医学では、秋は「肺」の季節。結びつく感情は「悲しみ・憂い」です。
  • さみしさは、なくすものではなく、気づいて、味わって、手放すものです。

秋にさみしくなるのは、なぜ? 現代医学の視点

日が短くなると、体内時計のリズムが弱まる

私たちの体内時計は、朝、目から入る光で毎日リセットされます。日中は気分の安定にかかわるセロトニンが、夜は眠りを促すメラトニンがはたらきます。秋は日の出が遅く、日照時間も短くなるため、この昼と夜のメリハリがつきにくくなります。

実際、オーストラリアで行われた研究では、日照時間が短い時期ほど、脳のセロトニンの代謝が少ないことが報告されています(Lambertら、2002年)。

朝の光が目から入り体内時計を整え、昼はセロトニン、夜はメラトニンがはたらく図。秋は光が減りリズムが弱まる 朝の 光 目から入る 体内時計をリセット 昼:セロトニン 気分の安定・活動 夜:メラトニン 眠りを促す 秋になると… 日の出が遅く、日照時間が短くなる ↓ 昼と夜のメリハリが弱まり、気分も沈みやすく
図1 光と体内時計、気分のリズム(イメージ)。朝の光は、体内時計を整える大切なスイッチです。

50代は、女性ホルモンのゆらぎも重なる時期

エストロゲン(女性ホルモン)は、セロトニンのはたらきにも関係しています。アメリカの長期研究では、閉経をはさむ時期は、気分の落ち込みが起こりやすいことが報告されています(Freemanら、2006年)。子どもの巣立ちや親の介護など、暮らしの節目も重なる年代。さみしさを感じやすい条件が重なっているだけで、あなたの心が弱いわけではありません。

東洋医学の視点:秋は「肺」の季節、感情は「悲しみ・憂い」

季節や臓器、感情を5つに分ける「五行(ごぎょう)」の考え方では、秋は「肺(はい)」と結びつき、肺の感情は「悲しみ・憂い」とされています(『黄帝内経素問』)。

東洋医学の肺は、呼吸で「気(き)」(体を動かすエネルギー)を全身にめぐらせるところ。乾燥に弱く、空気が乾く秋は疲れやすい季節です。古典には「悲しめば気消ゆ」という言葉があり、悲しみが続くと気がすり減り、気が弱るとさらに悲しみを感じやすくなると考えます。

秋の乾燥と短い日照で肺の気が弱り、悲しみが出やすくなり、悲しみが続くと気が消耗してさらに肺が弱る循環の図 秋:空気の乾燥・日が短くなる 肺の「気」が弱る 呼吸が浅い・乾燥 悲しみ・さみしさ が出やすい 気がすり減る ため息・疲れやすい 悲しみが長く続く
図2 秋の「肺」と悲しみの関係(東洋医学の考え方をもとにしたイメージ)。この流れをどこかでゆるめてあげることが大切です。

あなたのさみしさ、一緒に出ているサインは?

根っここんな日常のサインがあれば
肺の気の不足
(肺気虚・はいききょ)
呼吸が浅い、声に力が入らない、かぜをひきやすい。涙もろく、気持ちが沈みやすい
うるおい不足
(燥・そう)
のどや鼻、肌が乾く。空せきが出る。乾燥する日に気分もカサカサしやすい
気と血の不足
(気血両虚・きけつりょうきょ)
疲れやすく、考え込みがち。眠りが浅い、顔色がさえない、食が細い

東洋医学の考え方(日本東洋医学会のテキストなど)を参考に、日常のサインに言いかえたものです。診断のためのものではありません。いくつかの根っこが重なっている方も多くいます。

さみしさを「味わって、手放す」4つのステップ

あなたの感情は、あなたの人生を彩り豊かにしてくれる、とても大切なもの。でも、あふれて手からこぼれ落ちそうになると、ココロとカラダにダメージを与えてしまいます。そうなる前に、かなしみを少しずつ外へ出してあげましょう。

さみしさを手放す4つのステップの図。気づく、味わう、吐き出す、お返しする STEP 1 気づく 言葉にする STEP 2 味わう 原因探しはしない STEP 3 吐き出す 息・言葉・文字で STEP 4 お返しする 区切りの言葉 1回3〜5分でOK。できるステップだけでも大丈夫です
図3 さみしさを味わって手放す4つのステップ

STEP 1 気づく:「私はさみしいんだな」と言葉にする

さみしさが出てきたら、まずは「あ、私はさみしいんだな」と、心の中で言葉にしてみてください。胸に手を当てながらだと、なおいいですね。

気持ちを言葉にすると、不安や恐れに反応する脳の部分(扁桃体)の反応が落ち着くという研究があります(感情のラベリング、Liebermanら、2007年)。

STEP 2 味わう:原因探しをしなくても大丈夫

次に、そのさみしさを、そのまま味わいます。あれのせい? これのせい? と原因探しをしなくても大丈夫です。

「なぜ?」と考え続けると、頭の中がぐるぐるする「反すう」になり、落ち込みが長引きやすいことが知られています。理由がなくても、感じていいのです。胸がきゅっとする感覚を、良い・悪いと判断せずに「そうなんだね」と眺めてみましょう。

STEP 3 吐き出す:息・言葉・文字で外へ

味わったら、少しずつ外へ出してあげます。

  • ゆっくり、長く息を吐く4秒吸って、6〜8秒かけて吐く(苦しくならない長さで)。ゆっくりした呼吸は、リラックスを担う副交感神経のはたらきを高めることが報告されています。
  • さみしい気持ちを誰かに話す、ノートに書く解決しなくて大丈夫。外に出すだけで十分です。涙が出たら、止めなくていいですよ。

STEP 4 お返しする:「十分に味わいました。お返しします」

最後に、気持ちに区切りをつける言葉を、心の中で唱えるか、小さく声に出してみてください。

「私は十分に、この感情を味わいました。
もういらないので、お返しします」

無理に追い払うのではなく、「ちゃんと味わったから、もう大丈夫」と、ていねいにお返しするイメージです。決まった言葉や動作の小さな「儀式」が、喪失の悲しみをやわらげる助けになったという研究もあります(Nortonら、2014年)。寝る前など「お返しの時間」を決めておくと続けやすいですよ。

一度で全部お返しできなくても大丈夫。さみしさがまた来たら、また味わって、またお返しすればいいのです。

今日からできること

手放すのと一緒に、秋の体と心を根っこから整えていきましょう。

もし、これをやっていたら今すぐやめて!

  • 朝、カーテンを閉めたまま過ごす体内時計のスイッチになる朝の光を逃してしまいます。
  • 寝る直前までスマホやテレビの画面を見る夜の強い光は、眠りを促すメラトニンを減らすことが知られています。

かわりに、これを始めましょう

  • 起きたらすぐカーテンを開けて、朝の光を浴びるできれば、日中に10〜20分、外を歩きましょう。
  • 秋は「早寝早起き」『黄帝内経』には、秋は「早く寝て、早く起きる」ことで心を安らかに保つ、という養生法が書かれています。
  • 梨、れんこん、白きくらげ、百合根、白ごまを取り入れる東洋医学では、乾燥に弱い肺をうるおす食材とされています。温かいスープや煮物にすると、胃腸にもやさしいですね。

特に、こんな方に試してほしい

  • 毎年秋になると気持ちが沈む方、更年期で気持ちが揺れやすい方
    季節やホルモンの影響を受けやすいのも体質のひとつ。心と体をひとつながりで見るのが、東洋医学の得意なところです。
  • まずは暮らしと体質から、ナチュラルに整えたい方
    西洋薬と漢方薬は、得意なことが違います。つらさが強いときは病院のお薬が大きな助けになりますし、体質から整えたいときは漢方という選択肢もあります。

漢方の視点:整えるのは、ご自身の力

さみしさは、木でいえば秋に葉を落とすようなもの。葉が落ちるのは、木が弱ったからではなく、冬を越え、春にまた芽吹くための自然な準備です。大切なのは、その間も根っこをしっかり養っておくことです。

そして、心と体を整えていくのは、もともと備わっているご自身の力です。漢方薬は、その力をグッと引き上げてくれる後押し役です。

根っこは一人ひとり違います。漢方薬も医薬品ですので、治療中の病気がある方や、お薬を飲んでいる方は、必ず事前にご相談ください。

よくある質問

秋のさみしさと「冬季うつ」は、どう違うのですか?

季節性感情障害(いわゆる冬季うつ)は、秋から冬にかけて気分の落ち込みが始まり、春になると軽くなることを毎年くり返すのが特徴です。眠りすぎる、甘いものや炭水化物がほしくなる、といった症状も多いとされています。さみしさや落ち込みが2週間以上続き、日常生活に支障が出ているときは、医療機関に相談してください。

曇りや雨の日でも、朝の光を浴びる意味はありますか?

あります。曇りの日でも、屋外の明るさは室内の照明よりずっと強いといわれています。カーテンを開けて窓辺で過ごしたり、少しだけ外に出たりしてみましょう。

気分の落ち込みに、漢方薬は使えますか?

体質に合わせて、心と体のバランスを整えることを目指す漢方薬があります。ただし、うつ病などで治療中の方は、自己判断でお薬をやめたり変えたりせず、必ず主治医に相談してください。漢方に詳しい医師や薬剤師に、体質から相談することができます。

最後に、相談という手があります。

まずは明日の朝、カーテンを開けて光を浴びることから。さみしさが来たら、気づいて、味わって、お返ししてあげてください。

それでも秋になると毎年気持ちが沈む、さみしさがあふれそうになるときは、体質から根っこを一緒に見ていくことができます。漢方に詳しい薬剤師や医師に相談すると、ご自身に合った整え方を一緒に考えてもらえます。

参考にした文献・資料(タップで開く)
  1. Lambert GW, et al. Effect of sunlight and season on serotonin turnover in the brain. Lancet. 2002;360:1840-1842.
  2. Freeman EW, et al. Associations of hormones and menopausal status with depressed mood in women with no history of depression. Arch Gen Psychiatry. 2006;63:375-382.
  3. Maki PM, et al. Guidelines for the evaluation and treatment of perimenopausal depression. Menopause. 2018;25:1069-1085.
  4. Lieberman MD, et al. Putting feelings into words: affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychol Sci. 2007;18:421-428.
  5. Nolen-Hoeksema S. The role of rumination in depressive disorders and mixed anxiety/depressive symptoms. J Abnorm Psychol. 2000;109:504-511.
  6. Zaccaro A, et al. How breath-control can change your life: a systematic review on psycho-physiological correlates of slow breathing. Front Hum Neurosci. 2018;12:353.
  7. Norton MI, Gino F. Rituals alleviate grieving for loved ones, lovers, and lotteries. J Exp Psychol Gen. 2014;143:266-272.
  8. American Psychiatric Association. DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル(季節型の特定用語、うつ病の診断基準)
  9. 厚生労働省「こころの耳」、「まもろうよ こころ」(電話相談窓口)、e-ヘルスネット
  10. 『黄帝内経素問』陰陽応象大論・宣明五気篇・挙痛論・四気調神大論(肺と悲・憂、悲則気消、秋の養生)
  11. 日本東洋医学会 編『専門医のための漢方医学テキスト』南江堂

この記事は一般的な情報をお伝えするもので、診断や治療に代わるものではありません。症状や体質には個人差があります。気になる症状があるときは、医師や薬剤師にご相談ください。

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