🥣「薬膳は、もっと身近な“日々のごはん”」

「薬膳」と聞くと、難しそう、特別な材料が必要、手間がかかる…そんな印象を持つ方も多いのでないでしょうか。
けれど実は、薬膳とは季節や体調に合わせて、体に優しい食材を選ぶこと。
それは特別なことではなく、昔から家庭で大切にされてきた“知恵のあるごはん”とも言えます。
たとえば、疲れたときに山芋のお粥を食べたり、冷えを感じたら羊肉のスープを飲んだり。
これも立派な薬膳です。黒ごまやくるみ、ひじきなど、スーパーで手に入る食材にも補腎の力があり、少しの工夫で体が喜ぶ一皿に。
薬膳は難しくありません。身近な食材を選ぶ「気配り」こそが、薬膳の本質です。
今回は、女性のエイジングケアに役立つ『補腎』を目的とした薬膳についてご紹介いたします。
腎を補う黒い食材 〜生命力の源「腎精」を守る薬膳の知恵〜
薬膳の世界では、色と五臓の関係を重要視します。
その中で「黒」は「腎」に対応する色とされ、黒い食材は腎を養う力があるとされています。
特に年齢とともに衰えがちな「腎」を補うために、日々の食事に黒い食材を取り入れることはとても大切です。
中医学における「腎」とは?
中医学における「腎」は、西洋医学の腎臓とは異なり、より広範な働きを持っています。
腎は「先天の本(せんてんのもと)」とも呼ばれ、私たちが生まれながらに持つ生命エネルギー「腎精(じんせい)」を蓄える場所です。
この腎精は成長・発育・生殖・老化など、生命活動全般を支える源とされています。
腎の働きが弱まると、疲れやすさ、足腰のだるさ、耳鳴り、抜け毛、不妊などの症状が現れることがあります。
こうしたトラブルを防ぐには、腎精を補い、腎の力を高めることが必要です。
腎精を補う「黒い食材」
腎を養うためには、「補腎(ほじん)」という考え方があり、黒い食材はその代表的な存在です。以下に、腎精を補う代表的な黒い食材をご紹介します。
- 黒ごま(黒胡麻)
体を潤し、腸を整え、腎精を補う力があります。髪の健康維持やアンチエイジングにも効果的とされます。 - 黒豆
血行を促進し、老化防止や疲労回復に効果があるとされています。煮物やご飯に混ぜて手軽に取り入れられます。 - 黒きくらげ
血を補い、腸を潤す作用に加え、腎にも良いとされます。中華料理でよく使われる食材です。 - ひじき
ミネラルが豊富で、血や腎に良いとされます。髪の健康にもつながるため、女性に人気のある食材です。 - 黒米
抗酸化作用のあるアントシアニンが豊富で、腎の機能を高めるとともに、全身の滋養に役立ちます。

腎を補う薬膳レシピ
① 黒胡麻と山芋のお粥
材料(2人分)
- 白米:1/2合
- 水:500ml
- 山芋(すりおろし):100g
- 黒ごま:大さじ1
- クコの実:小さじ1(戻しておく)
- 塩:少々
作り方
- 米を洗って水に30分ほど浸しておく。
- 鍋に米と水を入れ、強火で沸騰したら弱火にしてコトコト炊く(20〜30分)。
- 粥がとろりとしてきたら、すりおろした山芋を加えてさらに5分加熱。
- 塩で味を整え、器に盛り黒ごまとクコの実をトッピング。
効能:腎精を補い、胃腸にも優しい。朝食にぴったり。
② 山芋とホタテの中華炒め
材料(2人分)
- 山芋:150g(皮をむいて短冊切り)
- ホタテ(生またはボイル):6〜8個
- クコの実:小さじ1(戻しておく)
- 長ねぎ(斜め切り):1/2本
- ごま油:大さじ1
- 鶏ガラスープの素:小さじ1
- 塩・こしょう:適量
作り方
- フライパンにごま油を熱し、長ねぎを炒める。
- ホタテを加え、軽く火が通るまで炒める。
- 山芋を加えてさっと炒め、クコの実と調味料を加えて味を整える。
- 全体が温まったら火を止めて盛り付け。
効能:腎を補いながら、美肌と滋養にも効果。
③ 鰻とくるみの炊き込みご飯
材料(2人分)
- 米:1合
- 水:通常の炊飯量
- 鰻の蒲焼き:1/2尾(食べやすい大きさに切る)
- くるみ:20g(軽く砕く)
- しょうゆ:小さじ1
- 酒:小さじ1
- みりん:小さじ1
作り方
- 米を洗い、調味料を加えて通常の水加減で炊飯器にセット。
- 鰻とくるみを上にのせて、通常通り炊飯。
- 炊き上がったら全体をさっくり混ぜて盛り付け。
効能:腎精と腎陽を補い、スタミナ回復にも。
④ 枸杞の実とひじきの卵焼き
材料(2人分)
- 卵:2個
- ひじき(乾燥):大さじ1(戻して水気を切る)
- クコの実:小さじ1(戻す)
- だし:大さじ2
- 砂糖:小さじ1
- 醤油:少々
- 油:少々
作り方
- ボウルに卵を割りほぐし、ひじき・クコの実・調味料を加えて混ぜる。
- フライパンに油を熱し、卵液を流し入れ、巻きながら焼く。
- 食べやすく切って盛り付け。
効能:腎を養い、血や目の健康にも良い。
日常に取り入れる薬膳の工夫
黒い食材は、日常の食卓にも簡単に取り入れられます。
たとえば、朝食に黒ごまをかけたお粥、夕食に黒豆入りの雑穀ご飯、黒きくらげの炒め物などがおすすめです。
継続して摂取することで、じわじわと腎を補い、体の芯から元気を育てることができます。