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木の芽時(きのめどき)は、心が揺らぐ季節

春になると、なんとなく気持ちが落ち着かない、イライラしやすい、眠れない……そんな経験はありませんか?
実は、春は古くから**「木の芽時(きのめどき)」**と呼ばれ、心身の不調が出やすい季節として知られてきました。これは単なる言葉の綾ではなく、東洋医学にも、そして最新の医学研究にも、きちんとした裏付けがあるのです。
東洋医学が教える「春と心の関係」
東洋医学(漢方)には、自然界の法則を「木・火・土・金・水」の5つに分類する「五行説(ごぎょうせつ)」という考え方があります。
この考えでは、春は「木」の季節であり、体の中では「肝(かん)」というはたらきと深く関わっています。
ここでいう「肝」とは、肝臓そのものというよりも、自律神経の調整や、気持ちの安定をつかさどる機能全体を指します。
春になると、この「肝」のはたらきが乱れやすく、自律神経が不安定になりやすいとされています。
漢方では、心のストレスは体全体を流れる「気(き)」(エネルギーのようなもの)が滞ることで生じると考えます。
これを「肝気鬱滞(かんきうったい)」と言います。さらに、気が滞ると体内で「火」に変わりやすく、炎症が起きやすい状態になるとも考えられてきました。
現代日本で急増する「心の病」
厚生労働省が令和6年に発表したデータによると、令和2年の時点で、うつ病や躁うつ病などの気分障害を抱える人は約169万人、不安障害やストレス関連の障害を抱える人は約123万人に上り、どちらも10年前と比べて約2倍に増えています。
うつ病の原因は「セロトニン不足」ではなかった?
うつ病は、「セロトニン(幸せホルモン)が不足しているから」
と聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
確かに1980年代にはそのような説が注目を集め、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる抗うつ薬が開発されました。
ところが近年、この「セロトニン不足説」に疑問の声が上がっています。理由は2つ。
- 治癒率が約 50% にとどまること
- うつ病患者の脳を検査しても、セロトニンが不足しているという明確な証拠が見つからないこと
最新医学が注目する「脳内炎症」という新説
そこで今、最も有力視されているのが 「神経炎症説(のうないえんしょうせつ)」――つまり、うつ病の原因は脳内の炎症であるという考え方です。
この説を支持する研究が次々と発表されています。
- 2014年・理化学研究所:慢性疲労症候群の患者では、脳の広い領域で炎症が起きており、その炎症が記憶力の低下や抑うつ症状と関係していることを発表
- 2015年・カナダ トロント大学:うつ病患者の脳内炎症は、健康な人と比べて30%も高いことを報告
- 2018年・神戸大学:ストレスによって脳内の免疫細胞である「ミクログリア」が活性化し、炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)が放出されることを解明
💡 ミクログリアとは? 脳の中に存在する免疫細胞。通常は脳を守る役割を担っていますが、過剰にはたらくと逆に脳内に炎症を引き起こしてしまいます。
また、脳以外の場所(腸や関節など)で生じた炎症物質が血液を通じて脳に届き、ミクログリアを刺激することでも、脳内炎症が起きることがわかっています。
「体の炎症が、心の不調につながる」ということです。
脳内炎症が関わる病気は、うつ病だけではない
脳内の炎症は、うつ病以外にも以下のような多くの病気と関わっていることがわかってきました。
- トゥレット症候群(チックなどの神経症状)
- 慢性疲労症候群
- ADHD(注意欠如・多動症)
- 睡眠障害
- アルツハイマー病・パーキンソン病
ただし、炎症が起きる脳の場所はそれぞれの病気によって異なります。
また残念ながら、これらの病気に対して安全かつ効果の高い西洋薬は、まだほとんどないのが現状です。
漢方の生薬が持つ、脳内炎症への可能性
こうした最新医学の知見と、古来の漢方が驚くほど重なっています。いくつかの生薬について、近年の研究で興味深い作用が報告されています。
🌿 柴胡(さいこ)
肝気鬱滞(ストレスによる気の滞り)に使われる代表的な生薬。含まれる**「サイコサポニン」**という成分に、脳内のミクログリアの過剰な活性化を抑えるはたらきがあることが、動物実験で確認されています。
🌿 釣藤鈎(ちょうとうこう)
高血圧や神経症に用いられる生薬。含まれる**「リコフィリン」**という成分に、脳内の神経炎症を抑えるはたらきがあると報告されています。
🌿 麝香(じゃこう)・羚羊角(れいようかく)・沈香(じんこう)・サフラン
これらは 「高貴薬(こうきやく)」と呼ばれる貴重な生薬群です。不安神経症やADHD様の症状に対して即効性があり、副作用リスクも少ない とされ、臨床現場でも注目されています。
🌿 鹿茸(ろくじょう)
鹿の若い角から作られる生薬。体内の抗酸化酵素(SOD、グルタチオンペルオキシダーゼ、カタラーゼなど)を活性化することで、体内の炎症を抑え、脳への炎症物質の流入を間接的に減らす効果が期待されています。また、漢方でいう「腎精(じんせい)」(生命エネルギーの根本)を補い、脳の健康を根本から支えるはたらきもあります。
💡 抗酸化酵素とは? 体内で発生する「活性酸素」(細胞を傷つける酸化物質)を無害化する酵素のこと。体のさびつきを防ぐ、天然の消火器のようなものです。
まとめ:春の心の揺らぎ、放っておかないで
「なんとなく気持ちが重い」「イライラが続く」「疲れが取れない」――50代はホルモンバランスの変化も重なり、心身のバランスが崩れやすい時期です。
最新医学と漢方の知恵は、「心の不調は脳の炎症と深く関わっている」という共通のメッセージを伝えています。
薬だけに頼るのではなく、体の炎症を抑える生活習慣(食事・睡眠・ストレスケア)と、漢方の力を上手に組み合わせることが、これからの「心の健康」を守るヒントになるかもしれません。
春の不調を感じたら、和歌山県 岩出市 はんなり堂薬局にご相談ください。
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