
〜中医学から考える、6月の暑さ対策〜
「熱中症は真夏にしか起こらない!」——そう思っている方は多いのではないでしょうか。
ピークこそ7〜8月ですが、実は、体が暑さに慣れていない6月は、少しの気温上昇でも熱中症が起きやすく、救急搬送の件数もこの頃から跳ね上がります。
その理由のひとつが、「体がまだ暑さに慣れていない」こと。
気温が上がり始めたこの時期、体は対応しきれずに悲鳴をあげていることがあります。
そして特に、50歳前後の女性にとってこの季節は要注意です。
更年期の変化と暑さのダメージが重なり、「熱中症なのか、更年期症状なのか」区別がつきにくい体調不良が起きやすくなります。
今回は中医学の視点から、6月の体の変化と、毎日できる暑さ対策をご紹介します。
目次
中医学が6月をどう見るか
中医学では、季節の気候を「六淫(ろくいん)」と呼ばれる6種類の邪気との関連で考えています。
真夏であれば、暑さによる「暑邪(しょじゃ)」が中心ですが、梅雨前の6月は少し複雑です。
暑さが忍び込み始める一方で、湿気も徐々に増してくる——「暑邪」と「湿邪(しつじゃ)」が交差する微妙な季節なのです。
暑邪には、
体の「気(き)=エネルギー」と「津液(しんえき)=体の潤い」を同時に消耗させる性質があります。
さらに湿邪は、食べたものを消化・吸収して体の栄養とする、「脾(ひ)」を弱らせてしまいます。
そうすると…
✅ だるい
✅ 食欲がなくる
✅ 頭が重い
✅ 体や手足がむくむ
といった、梅雨の時期に起こりやすい不調につながります。
6月に影響を受けやすい体の部位3つ
心(しん)
夏は「心」の季節。心臓がドキドキする・眠れない・汗がダラダラと出る・精神的に不安手になりやすい
などが出やすくなります。
気と津液
汗とともにエネルギーと潤いが失われ、だるさ・口渇・めまいが起こることも。
脾(ひ)=胃腸
湿気に最も弱い体の部位です。胃腸が弱ると、食欲不振・消化不良・むくみの原因になります。
50歳以上の女性が特に注意したいこと
「最近、なんだかほてる。夜中に汗をかいて目が覚める。イライラしやすくなった気がする——」
そんな変化を感じている方は、もしかしたら「腎陰虚(じんいんきょ)」の状態にあるかもしれません。
中医学では、更年期前後の女性はこの状態になりやすいと考えます。
腎の陰とは、体を内側から潤し、冷やす力のこと。
ちょうど、乾いた大地に水が染み込むように、体の熱をしずめてくれる存在です。この潤いの力が年齢とともに少しずつ弱まっていくのが、腎陰虚という状態です。
そしてここに、夏の暑さが加わります。
中医学では夏の暑さを「暑邪(しょじゃ)」と呼びますが、暑邪が引き起こす症状——ほてり・のぼせ・多汗・倦怠感——は、腎陰虚の症状とほとんど重なります。
つまり更年期の体は、夏が来る前からすでに「熱がこもりやすい」下地ができているのです。
暑さのダメージを、人一倍受けやすい状態といえます。
もうひとつ、見落としがちなことがあります。
年齢を重ねると、のどの渇きを感じるセンサーが少しずつ鈍くなります。「まだ大丈夫」と感じていても、体の中ではすでに水分が失われていることが少なくありません。「のどが渇いてから飲む」では、この時期は遅いのです。
💡 50歳以上の女性が見落としやすい3つのサイン
- 🟨 更年期症状と熱中症の区別がつきにくい。
のぼせ・多汗・倦怠感が重なるとき、どちらが原因かわかりにくいことがあります。
めまいや吐き気も伴う場合は、熱中症として対処しましょう。 - 🟨 のどが渇く前にすでに脱水が進んでいる。
「まだ大丈夫」と感じていても、体内の水分は失われています。時間を決めて、意識的に水を飲む習慣をつけましょう。 - 🟨 上はほてるのに足は冷える「冷えのぼせ」。クーラーや冷たい飲み物で上半身の熱を抑えようとすると、
下半身の冷えが悪化します。温度差の大きい環境への注意が必要です。
今日からできる、中医学的な暑さ対策
「熱中症を防ぐために、特別なことは必要ありません。毎日の小さな習慣を丁寧に積み重ねること——
それが、中医学でいう『養生』のはじまりです。」
🍽 気と潤いを補う食材を積極的に
山芋・なつめ・はちみつ・豆腐・白きくらげは、「気」と「陰(潤い)」を同時に補ってくれる食材です。
🥒 清熱・利湿の食材で体の熱と湿気を流す
緑豆・冬瓜・ハトムギ(薏苡仁)・きゅうりは、体にこもった余分な熱を冷まし、湿気を排出する食材です。
はと麦茶や蓮の葉茶を日常の飲み物として取り入れるのも手軽でおすすめです。
❌🧊冷たいものに頼りすぎない
冷たい飲み物や食べ物は、脾を冷やして弱らせ、かえって湿を溜め込む原因になります。
水分補給は常温〜白湯を基本に。冷房も冷えすぎに注意し、羽織れるものを一枚持ち歩くと安心です。
💗「心」を養う睡眠と静けさを大切に
夏は「心」の季節。睡眠不足や心理的なダメージは、心を直接傷めます。
眠れない・動悸が気になるという方には、蓮の実・百合根・酸棗仁(さんそうにん)を使ったお茶やスープが昔から用いられてきました。
就寝前のスマートフォンを控え、ゆったりした時間を意識的につくることも大切な養生です。
🧘♂️ 早朝か夕方に、ゆるやかに体を動かす
暑さのピークを避けた時間帯に、軽い散歩や体操を取り入れましょう。
太極拳や気功のようにゆっくりとした動きで気をめぐらせる運動は、消耗を最小限にしながら体の滞りを流してくれる、夏にぴったりの養生法です。
激しい運動で大量に汗をかくと、気と津液が一気に失われるので、この季節は特に「ほどほど」が基本です。
🌿 生脈散(しょうみゃくさん)について
夏の養生を語るとき、中医学で欠かせない処方のひとつが「生脈散(しょうみゃくさん)」です。
その名前には、深い意味が込められています。「生脈」とは、「脈を生き返らせる」こと。暑さや多汗によって気と津液が失われ、弱くなった脈を回復させる——そのような状態を治す処方であることから、この名がつけられました。
構成はたった3つの生薬で、非常にシンプルです。
人参(にんじん)は「補気」の働きを持ち、消化・吸収の力を高めながら全身の機能を底上げします。
抗利尿作用によって体液を保持する力もあります。
麦門冬(ばくもんどう)は体内の陰液を補い、乾燥から体を守る「潤燥生津」の作用を持ちます。
潤いを内側から補給するイメージです
五味子(ごみし)は酸味による収斂作用で汗を止め、体液がこれ以上失われるのを防ぎます。いわば「栓をする」役割です。
この3つが合わさることで、気を補い、津液を増やし、発汗を抑えるという三位一体の効果が生まれます。脱水を防ぎながら元気をつける、夏にぴったりの処方です。
50歳以上の女性との相性という点でも、生脈散は注目されています。
汗をかきすぎて消耗している体を立て直す働きがあり、冷房による冷えにも対応できます。更年期で体の潤いが不足しやすい時期に、気と陰を同時に補えるのは大きな利点です。
ただし、漢方薬はあくまで体質や状態に合わせて選ぶものです。
生脈散が気になる方は、ご相談くださいね✨
最後に
中医学には「未病を治す(みびょうをおさめる)」という考え方があります。
病気になってから対処するのではなく、不調の芽が小さいうちに整えるという発想です。
6月の「なんとなくだるい」「食欲がわかない」「眠りが浅い」——こうした体のサインを見逃さず、食事・水分・睡眠という日々の基本を丁寧に積み重ねること。それが、本格的な夏を元気に乗り越えるための、一番の準備になります。
