寒くなると、甘いものが止まらない。
それは、胃腸と眠りからのサインかもしれません|西洋医学と東洋医学から見る「冬の食べすぎ」
体重が気になるのに、ごはんの後も、ついお菓子に手が伸びる。
コンビニに並ぶ「新作」「冬だけ」のチョコやスイーツ。
気づけば、カゴの中に…。
その気持ち、よくわかります。
甘いものが止まらないのは、あなたの意志が弱いからではありません。
疲れた胃腸や、足りていない眠りが、うしろからそっと食欲を押していることがあるのです。このコラムでは、そのしくみを西洋医学と東洋医学の両方からひもときます。
- 漢方では、甘い味は胃腸(脾)を補う味。胃腸が疲れると、甘いものが欲しくなると考えます。
- 眠りが足りない日は、食欲をおさえるホルモンが減り、食欲を高めるホルモンが増えます。
- だからこそ、「がまん」より「欲しくなりにくいカラダに整える」がおすすめです。
寒くなると、甘いものが恋しくなるのはなぜ?
寒くなると濃厚な甘さが恋しくなるのは、カラダの自然な反応です。秋から冬は、食べる量が増えて、動く量が減りがち。よくあることなんです。
少し食べたくらいで、すぐに体重は増えません。気をつけたいのは、それが毎日の習慣になることです。
更年期は、ホルモンのゆらぎで、イライラしたり気持ちが沈んだりしやすい時期。甘いもので、ほっとしたい日もありますよね。
ただ、その「ほっ」は、意外と短いもの。甘いものを食べたあとは、気分が上がるどころか、かえって疲れを感じやすいこともわかっています。
【参考】31の研究をまとめた解析で、糖質をとったあと1時間ほどは、とらなかった場合より疲労感が強い傾向がみられました(Mantantzisら、2019年)。
東洋医学の視点:胃腸は「甘い味」を欲しがる
漢方では、味を「酸っぱい・苦い・甘い・辛い・塩からい」の5つに分けて考えます。古い医学の本には、「甘は脾に入る」「脾は甘を欲す」と書かれています。
【参考】『黄帝内経素問』宣明五気篇・五蔵生成篇
「脾(ひ)」は、今でいう胃腸のはたらきのこと。食べたものから、カラダを動かすエネルギー「気(き)」をつくる、大切な場所です。
甘い味には、この脾を補い、ゆるめ、和らげるはたらきがあるとされます。だから胃腸が疲れて元気が足りなくなると、カラダは手っ取り早く補える甘いものを欲しがる、と考えるのです。
甘いものが欲しくなるのは、胃腸からの「ちょっと疲れたよ」のサインなのかもしれません。
本当の「甘」は、やさしい甘み
ここで大切なのは、漢方でいう「甘」は、お菓子の甘さだけではないということ。
ごはんをよく噛んだときの甘み。かぼちゃ、さつまいも、なつめ。
こうした穏やかな甘みこそが、本来、胃腸を養う「甘」です。
甘いもので、胃腸がまた疲れる
ところが、ケーキやクッキーのような甘くて脂っこいものをとりすぎると、カラダに余分な水分「湿(しつ)」がたまり、胃腸が重くなると考えます。脾は、この湿がとても苦手なのです。
胃腸が疲れる → 甘いものが欲しくなる → 胃腸がまた疲れる。
こうして、ぐるぐると悪いくり返しが始まります。
こんなサインはありませんか?胃腸の疲れチェック
- 食後に眠くなる、カラダが重だるい
- 胃もたれしやすく、一度にたくさん食べられない
- お通じがゆるくなりやすい
- 舌のふちに、歯のあとがつく
- むくみやすい
- 甘いものを食べると、ほっとする
漢方で「脾虚(ひきょ)」と呼ばれる状態に多いサインを、わかりやすく言いかえたものです。診断のためのものではありません。
西洋医学の視点:胃腸と脳は、つながっている
「胃腸が疲れると甘いものが欲しくなる」。
実はこれを、人で直接たしかめた研究は、まだ多くありません。
ただ、つながりそうなヒントは見つかっています。
ごはんが足りないと、甘いものに惹かれやすい
おなかがすいていると、脳はケーキのような高カロリーのものを、よりおいしそうに感じやすくなります。
胃もたれでごはんが少なかった日や、ダイエットでごはんを抜いた日に、あとでお菓子が欲しくなる。そんな経験はありませんか?
【参考】朝食を抜いた状態では、食べた後に比べて、高カロリーの食べものの写真に脳の「ごほうび」に関わる場所が強く反応しました(Goldstoneら、2009年)。
「砂糖+油」は、あとを引く
脂肪と糖が組み合わさった食べものは、どちらか一方だけのものより、「もっと食べたい」気持ちが強くなります。
ケーキ、クッキー、チョコレートは、まさにこの組み合わせ。しかも脂肪は胃に長くとどまるので、胃もたれしやすい方には負担になりやすいのです。
【参考】DiFeliceantonioら、2018年/日本消化器病学会「機能性消化管疾患診療ガイドライン2021」
まだ研究の途中のことも
腸が糖を感じとって脳に知らせるしくみや、腸の細菌が「食べたいもの」に影響しているのでは、という説もあります。
ただし、人で同じことが起きているかは、まだわかっていません。これからの研究が楽しみなところです。
【参考】マウスでの研究(Tanら、2020年)/仮説の段階の総説(Alcockら、2014年)
眠りが足りない日ほど、甘いものが止まらないワケ
甘いものが止まらない、もう一つの根っこが眠りです。こちらは、人の実験でかなりはっきりわかってきています。
食欲のホルモンが変わる
私たちの食欲は、主に2つのホルモンが調整しています。
- レプチン:「もうおなかいっぱい」と食欲をおさえる
- グレリン:「おなかがすいた」と食欲を高める。主に胃から出ます
眠りが足りないと、レプチンが減って、グレリンが増えます。すると、甘いものやスナック、パンなどが、いつもより食べたくなるのです。
【参考】睡眠を2晩続けて4時間にすると、甘いものなどを食べたい気持ちが33〜45%高まりました(Spiegelら、2004年)。
脳の「がまんのブレーキ」がききにくくなる
眠りが足りない日は、がまんや判断に関わる脳のはたらきが弱まり、高カロリーのものを「欲しい」と感じやすくなります。
「わかっているのに、やめられない」。
それは、眠りが足りていないせいかもしれません。
【参考】Greerら、2013年
よく眠ると、食べる量が減る
眠りが足りない日は、ふだんより多く食べてしまいがち。反対に、眠る時間を少し増やしただけで、食べる量が自然と減ったという報告もあります。
がまんしなくても、眠るだけで食べる量が変わる。うれしい発見ですね。
【参考】眠りが足りない日は1日約385kcal多く食べていました(Al Khatibら、2017年)。眠る時間を1日1時間ほど増やすと、食べる量が1日約270kcal減りました(Tasaliら、2022年)。
更年期は、眠りが浅くなりやすい時期
更年期は、ほてりや寝汗で、夜中に目が覚めやすい時期です。布団に入っている時間は足りていても、途中で何度も目が覚めると、実際に眠れている時間は短くなってしまいます。
「ちゃんと寝ているのに、甘いものが止まらない」。そんな方は、眠りの深さも振り返ってみてください。
【参考】Bakerら、2018年
漢方から見ても、夜は胃腸の休み時間
漢方では、夜はカラダを休めて、昼に使った気や血(けつ)を養い直す時間と考えます。
夜ふかしをして夜食をとると、休むはずの胃腸が遅くまで働き続けることに。翌朝は胃が重く、食欲がわかないまま一日が始まり、また甘いものに頼る…。眠りと胃腸は、つながっているのです。
「がまんする」より「欲しくなりにくいカラダに」
甘いものを無理に断つと、かえって反動が出やすいもの。
根っこにある胃腸の疲れと眠りを整えて、自然と欲しくなりにくいカラダにしていきましょう。
もし、これをやっていたら今すぐやめて!
- 夜ふかしで、寝る時間を削る眠りが足りないと、食べすぎにつながります。
- ダイエットのつもりで、ごはんを抜く反動で、かえって甘いものが欲しくなります。
- ケーキやクッキーを「ちょっとだけ」と毎日砂糖+油は、あとを引きます。
- 寝る直前の夜食やお菓子胃腸が休めず、眠りも浅くなりがちです。
かわりに、これを始めましょう
- ぐっすり眠る時間をつくるまずは、いつもより15分早く布団へ。
- ごはん(主食)を1日3食きちんとよく噛むと、ごはんのやさしい甘みが感じられます。
- 甘さがほしいときは、温かい飲み物にハチミツを小さじ1杯ゆっくり味わいましょう。
- おやつには、薬膳で胃腸をいたわるとされる「なつめ」を2〜3粒焼きいもなど、穏やかな甘みのものもおすすめです。
こんなときは、まずは病院へ(タップで開く)
- のどがよく渇く、尿の回数が多い、食べているのに体重が減る
- 大きないびきや、寝ているときに呼吸が止まっていると言われる。日中に強い眠気がある
- 眠れない日や、気分の落ち込みが2週間をこえて続く
- 胃の痛みや胃もたれが続く
- 食べるのを止められず、そのあと自分を強く責めてしまうことがくり返される
糖尿病や、寝ているあいだに呼吸が止まる病気など、治療が必要な病気が隠れていることもあります。気になる症状は、医師にご相談ください。
漢方の視点:整えるのは、ご自身の力
甘いものが止まらない根っこは、一人ひとり違います。
| 根っこ | こんな様子 |
|---|---|
| 胃腸の疲れ | 胃もたれ、食後の眠気、甘いものでほっとする |
| 湿がたまる | カラダが重だるい、むくみやすい |
| 眠りの不足 | 寝つきが悪い、夜中に目が覚める |
| ストレス | イライラすると食べたくなる、ため息が多い |
漢方の考え方をもとにした目安です。いくつか重なっている方も多くいらっしゃいます。
整えていくのは、もともと備わっているあなた自身の力。漢方薬は、その力をグッと引き上げる後押し役です。
漢方薬もお薬ですので、治療を受けている病気がある方や、ほかのお薬を飲んでいる方は、必ず事前にご相談ください。
よくある質問
甘いものは、完全にやめたほうがいいですか?
完全にやめなくても、だいじょうぶです。WHOは、お菓子や飲み物に加える砂糖などを、1日のエネルギーの10%未満、できれば5%未満(大人で1日25g程度)にすることをすすめています。量を決めて、ゆっくり味わって楽しみましょう。
カロリーゼロの甘いものなら、いくらとってもいいですか?
WHOは2023年に、体重を減らす目的で、砂糖のかわりに人工の甘みを使うことはすすめない、という指針を出しています。長い目で見て、体重を減らす効果がたしかめられていないためです。甘さに慣れた舌を、少しずつ戻していくのがおすすめです。
果物なら、たくさん食べてもだいじょうぶですか?
果物はビタミンや食物せんいもとれるので、お菓子よりおすすめです。ただ、漢方では、冷たい性質の果物を食べすぎると胃腸を冷やすと考えます。冬は食べすぎず、常温で少しずつがよいでしょう。
寝る時間を増やせないときは、どうしたらいいですか?
寝る前の1時間はスマホを控えめにする、ぬるめのお風呂で温まる、寝室を暗くするなど、眠りを深くする工夫から始めてみてください。
最後に、相談という手があります。
まずは今夜、いつもより少し早く布団に入ってみてください。
明日は、ごはんをよく噛んで、そのやさしい甘みを味わってみてください。
それでも甘いものが止まらない、眠りが浅い日が続くときは、胃腸の強さや眠りの状態など、体質から根っこを一緒に見ていくことができます。漢方にくわしい薬剤師や医師に相談すると、あなたに合った整え方を一緒に考えてもらえます。
参考にした文献・資料(タップで開く)
- Spiegel K, Tasali E, Penev P, Van Cauter E. Brief communication: sleep curtailment in healthy young men is associated with decreased leptin levels, elevated ghrelin levels, and increased hunger and appetite. Ann Intern Med. 2004;141(11):846-850.
- Greer SM, Goldstein AN, Walker MP. The impact of sleep deprivation on food desire in the human brain. Nat Commun. 2013;4:2259.
- Al Khatib HK, Harding SV, Darzi J, Pot GK. The effects of partial sleep deprivation on energy balance: a systematic review and meta-analysis. Eur J Clin Nutr. 2017;71(5):614-624.
- Tasali E, Wroblewski K, Kahn E, Kilkus J, Schoeller DA. Effect of sleep extension on objectively assessed energy intake among adults with overweight in real-life settings: a randomized clinical trial. JAMA Intern Med. 2022;182(4):365-374.
- Baker FC, Lampio L, Saaresranta T, Polo-Kantola P. Sleep and sleep disorders in the menopausal transition. Sleep Med Clin. 2018;13(3):443-456.
- Tan HE, Sisti AC, Jin H, et al. The gut-brain axis mediates sugar preference. Nature. 2020;580(7804):511-516.
- Goldstone AP, Prechtl de Hernandez CG, Beaver JD, et al. Fasting biases brain reward systems towards high-calorie foods. Eur J Neurosci. 2009;30(8):1625-1635.
- DiFeliceantonio AG, Coppin G, Rigoux L, et al. Supra-additive effects of combining fat and carbohydrate on food reward. Cell Metab. 2018;28(1):33-44.
- Alcock J, Maley CC, Aktipis CA. Is eating behavior manipulated by the gastrointestinal microbiota? Evolutionary pressures and potential mechanisms. BioEssays. 2014;36(10):940-949.
- Mantantzis K, Schlaghecken F, Sünram-Lea SI, Maylor EA. Sugar rush or sugar crash? A meta-analysis of carbohydrate effects on mood. Neurosci Biobehav Rev. 2019;101:45-67.
- 日本消化器病学会 編「機能性消化管疾患診療ガイドライン2021—機能性ディスペプシア(FD)(改訂第2版)」南江堂
- World Health Organization. Guideline: Sugars intake for adults and children. 2015.
- World Health Organization. Use of non-sugar sweeteners: WHO guideline. 2023.
- 『黄帝内経素問』宣明五気篇(甘入脾)・五蔵生成篇(脾欲甘)
- 日本東洋医学会 編『専門医のための漢方医学テキスト』南江堂
この記事はみなさんに向けた情報をお伝えするもので、診断や治療に代わるものではありません。症状や体質には人によって違いがあります。気になる症状があるときは、医師や薬剤師にご相談ください。
