〜「気のつかえ」をほどく、吐く呼吸のすすめ〜
「気づくと、ため息ばかりついている」
「胸やのどに、何かつかえている感じがする」
「言いたいことを、つい飲み込んでしまう」……
そんな方の胸のザワザワは、気(エネルギー)が胸でつかえているタイプかもしれません。
まず、お伝えしたい結論です。
ため息やつかえは、
カラダが「気をめぐらせたい」と出しているサイン。
そして、その手助けになるのが、「吸う」より「吐く」を長くする呼吸です。
今日は、その理由を東洋医学と現代医学の両方からひもといてみましょう。
こんな様子に、心当たりはありませんか?
- ✅ため息が多い
- ✅胸やのどに、何かつかえている感じがする
- ✅イライラと落ち込みを行ったり来たり
- ✅気持ちを言葉にしないまま飲み込んでいる
- ✅お腹が張りやすい、げっぷが出やすい
いくつか当てはまる方は、気のめぐりが滞りやすくなっているのかもしれません。
東洋医学で見る「気のつかえ」
東洋医学では、気をのびやかにめぐらせるのは「肝(かん)」の役割とされています。これを「疏泄(そせつ)」といいます。
言いたいことを飲み込み、感情にフタをし続けると、肝ののびやかさが失われ、気が胸のあたりで停滞しやすくなります。
気がめぐらない
→ 胸のつかえ・ザワザワ・ため息
というつながりなんですね。
のどの「つかえ」は、昔から知られていた
のどに何か引っかかっているのに、食事は普通に飲み込める。
病院で調べても異常がない――。
実はこの感覚、約1800年前の中国の医学書『金匱要略(きんきようりゃく)』にも「のどに炙った肉片が貼りついているよう」と記されています。
東洋医学では、梅の種がのどにつかえているようだとして「梅核気(ばいかくき)」と呼ばれ、気の滞りと関係が深いと考えられてきました。
現代医学でも、同じような感覚は「咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)」や「ヒステリー球」と呼ばれ、ストレスや不安、胃酸の逆流などが関わることがあるとされています。
現代医学から見た「ため息」と「吐く呼吸」
ため息は、呼吸のリセットボタン
ため息というと、あまりいいイメージがないかもしれません。
でも実は、ため息には、浅くなった呼吸をリセットし、肺の奥の小さな袋(肺胞)をふくらませ直す役割があることがわかっています。
また、ストレスがかかった後や、ほっとしたときにため息が増えることも報告されています。
つまり、ため息は『悪いクセ』ではなく、カラダが自分で整えようとしている合図。我慢しなくていいんですね。
「吐く」ときに、カラダはゆるむ
私たちの心拍は、息を吸うと少し速くなり、吐くとゆっくりになります。吐くときには、リラックスを担う副交感神経がはたらきやすくなるためです。
ゆっくりとした呼吸(1分間に6回前後)は、副交感神経の働きを高め、気持ちを落ち着かせることが研究で報告されています。
ずっと「頑張りモード」の交感神経が優位になっている方ほど、意識して「吐く」時間をつくることが大切なんです。
気持ちを「言葉にする」ことにも意味がある
心理学では、自分の気持ちを「いま、私はイライラしている」と言葉にするだけで、不安や怒りに関わる脳の反応がやわらぐという研究があります。
飲み込んでいた気持ちを言葉にすることは、東洋医学でいう「気をめぐらせる」ことにも通じますね。
今日からできるセルフケア
特別なことをする必要はありません。すでにしていることに、ほんの少し工夫を足してみましょう。
1. 「4秒吸って、6〜8秒で吐く」呼吸
- ●鼻から4秒かけて吸う
- ●口をすぼめて、6〜8秒かけてゆっくり吐く(慣れてきたら8秒を目安に)
- ●これを5回くり返す
朝のコーヒーを淹れる間、信号待ち、湯船の中など、すでにある時間に組み込むのがおすすめです。
※苦しいと感じたら無理をせず、楽な長さで大丈夫です。
2. ため息は、そのまま「吐き切る」
- ●ため息が出たら「いま気が詰まっているんだな」と気づく
- ●そのまま、もう一度ゆっくり吐き出す
ため息を止めるのではなく、味方にしてしまいましょう。
3. 気持ちを「言葉」で表現する
- ●「いま、ちょっと悲しい」「本当はイヤだった」と、ココロの中でつぶやく
- ●寝る前に、手帳に今日の気持ちをひと言だけ書く
誰かに見せる必要はありません。言葉にするだけで、気が外へめぐり始めます。
こんなときは、医療機関へ
のどのつかえ感は、多くの場合は心配のないものですが、次のようなときは一度診てもらいましょう。
一度、受診してほしいサイン
- ●食べ物や飲み物が飲み込みにくい、飲み込むと痛む
- ●声のかすれが2週間以上続く
- ●首にしこりがある、体重が減ってきた
- ●胸やけや、すっぱいものが上がってくる感じが続く
のどや声の症状は耳鼻咽喉科、胸やけは消化器内科がご相談先です。
すぐに医療機関へ
- ●強い息苦しさや胸の痛みがあるとき
迷ったら119番に電話してください。
気のつかえ、漢方でも整えられます
東洋医学では、同じ「つかえ」でも、気の滞りが強い方、胃腸が弱っている方、うるおいが不足している方など、体質によって整え方が変わります。
『金匱要略』の時代から、のどのつかえには気のめぐりを助ける処方が使われてきました。今の漢方相談でも、体質を伺ったうえで、その方に合うものを一緒に考えていきます。
ため息やつかえが続くときは、ひとりで抱えず、漢方相談で体質から一緒に見ていきましょう。
ため息が出るのは、あなたががんばってきた証拠。
だから、大丈夫。
※漢方薬は体質や症状に合わせて選ぶことが大切です。現在病気の治療中の方や、お薬を服用中の方は、医師・薬剤師にご相談ください。
※この記事は一般的な情報をお伝えするもので、診断に代わるものではありません。気になる症状があるときは、医療機関を受診してください。
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参考
- 張仲景『金匱要略』婦人雑病脈証并治第二十二
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「咽喉頭異常感症」
- Li P, et al. The peptidergic control circuit for sighing. Nature. 2016;530:293-297.
- Vlemincx E, et al. Why do you sigh? Sigh rate during induced stress and relief. Psychophysiology. 2009;46:1005-1013.
- Russo MA, et al. The physiological effects of slow breathing in the healthy human. Breathe. 2017;13:298-309.
- Zaccaro A, et al. How Breath-Control Can Change Your Life. Front Hum Neurosci. 2018;12:353.
- Lieberman MD, et al. Putting feelings into words. Psychol Sci. 2007;18:421-428.
